第61期王位戦は、藤井聡太七段が予選から全勝で木村一基王位への挑戦権を獲得した。7月1・2日に愛知県豊橋市「ホテルアークリッシュ豊橋」で七番勝負第1局が行われる。
木村王位は昨年、タイトル初獲得の史上最年長記録を樹立した。藤井七段は今年、史上最年少でタイトル初挑戦(棋聖戦)を決めた。二人の実年齢は30歳近い差がある。その棋歴は対照的だ。それぞれの記録を交えつつ、シリーズの見どころを探っていく。
百折不撓の男、木村一基
撮影:牛蒡
木村は「百折不撓」とよく揮毫する。百回折られても撓(たわ)まない、それが木村である。タイトル経験者の多くは十代でプロになるが、木村は23歳9ヵ月で四段に昇段した。この時点ですでに苦労人だ。23歳からスタートしてタイトルに手が届いたのは木村しかいない。
タイトル獲得までの道のりも長かった。前期の王位戦は自身7回目のタイトル挑戦。まさに宿願成就だった。王位獲得直後のインタビューでは、これまでの苦労について聞かれても冷静に答えた。しかし、家族への思いについて聞かれると感極まり、涙があふれた。木村の人柄がよくわかるエピソードだ。
いよいよ本格化してきた藤井聡太
撮影:常盤秀樹
6月に藤井の「最年少記録」がまたひとつ増えた。第91期ヒューリック杯棋聖戦で挑戦者になり、タイトル挑戦の最年少記録を更新したのだ。この夏は棋聖戦と王位戦のダブルタイトル戦を戦う。どちらのタイトルを獲っても最年少記録となる。もし棋聖と王位の二冠となれば、二冠と八段昇段(タイトル獲得2期)の最年少記録も加わる。
6月の活躍ぶりは、もはや最年少記録という枠を飛び越え、棋界のトップ争いをしているというべきだろう。棋界の勢力図を塗り替えてもおかしくないほどの力をつけてきた。
それぞれの課題、見どころ
今回のシリーズでは、どちらも課題を抱えての戦いが予想される。共通する不安材料は、挑戦者決定から第1局までの期間が1週間ほどしかないこと。対藤井戦、対木村戦に絞った研究をどれほど積めたか。
木村は防衛戦の難しさにも向き合わなくてはならない。昨年度はタイトル戦で挑戦者の奪取が相次いだ。防衛に成功したのは渡辺明三冠だけである。挑戦者は強豪を倒してきているのだから、当然ながら波に乗っている。一方、タイトル保持者は、番勝負に向けて調子を合わせる必要がある。後者のほうが難度は高い。
ただ、木村は今期3勝0敗で好スタートを切った。調整はうまくいっていそうだ。開幕戦は藤井の地元である愛知県で行われるため、木村にとって逆風が吹くかもしれないが、木村のファンも多い。彼らの声援が木村をあと押しするだろう。
藤井の不安材料は過密日程。ダブルタイトル戦に加えて、勝ち残っている棋戦が多い。6月の対局は9局だった(それを8勝1敗でカバーしたのが藤井の尋常でないところだが)。7月もかなりの対局数が見込まれる。王位戦で全国各地を転戦することを考えると、6月よりも体調管理は難しくなるだろう。
また、王位戦はこれまでの対局とは違い、2日制で行われる。長考派の藤井が時間を持て余すことはないだろうが、封じ手をめぐる駆け引きや1日目の夜の過ごし方などは初めての経験になる。自分に合った形を早めに見つけられるかどうか。対応力が問われる。
いずれにしても注目のシリーズになる。第1局は、王位戦中継サイト、日本将棋連盟ライブ中継、ABEMAなどで中継される。対局前日には、YouTubeの「中日新聞・電子編集部」チャンネルがオンライン前夜祭を放送する。各媒体で王位戦を楽しんでいただきたい。

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June 30, 2020 at 09:06AM
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